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「ヤァ。待ってたヨ」


扉を開けた彼の第一声だった。

中へ入るように促され

結斗は部屋へと足を進めた。


「ジン、僕に何か用があるの？」


「久しぶりに顔がみたくなったんだヨ。
わざわざ来てくれてアリガトウナ」


「いや…」


「せっかく部屋に来たところ悪いんだケド
少し風に当たらないカ？」


向かいに座っていたジンは

すっと立ち上がり、部屋のドアに向かって歩く。

結斗もそれを追うように立ち上がる。

ロビーに下りる。

まだ少しだけ人が行き来する姿が見られるが

外を出歩く人間はほとんどいなかった。

ホテルを出る。

夜風が少し冷たかった。

ジンがふと空を見上げて言った。


「今日は新月なのカ。暗いナ」


「…そうだね」


「ナァ、お前がフランスを発つ少シ前に創リ始めた
「あの人形」、完成したノ？」


「え？」


「ほら、俺見てないダロ？
見せて欲しいんダ。
…まぁ外見はなんとなく想像つくんだけド」


「………」


視線をそらす結斗を鼻で笑い、ジンは話を続けた。


「『ドールマスター』として
頑張ってるみたいダナ。
他人を救けて、何かいいことでもあったカ？」


「………」


黙り込む結斗の胸倉を

ジンはガッと掴み上げて壁に叩き付けた。


「…っ」


「他人のために自分犠牲にすれば
自分が救われるとでも思っテンノカ?!
無駄なんダヨ、お前のやってる事ハ！」


「ユイ!!」


「っアリア?!」


声に反応し慌てて周囲を見回すと

必死に駆け寄ってくるアリアの姿を見つけた。

アリアはジンの腕を払い、倒れそうになる結斗を支えた。