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結斗が走っているその廊下は

決して長いものではなかった。

なのにどうしてか

走っても走っても先が見えない。




いや。




本当に走っているのだろうか。

突然妙な感覚に襲われた。

頭がくらくらする。

嫌な匂いがする。

…なんだこれは…。

…死臭…?

足取りが覚束無い結斗は

意識を失ったようにその場に倒れこんだ。












――…






まだ痛む頭を押さえながら

結斗は目を覚ました。

辺りは静寂に満ちていた。

屋敷の様子がおかしい。

足音一つ、声一つ聞こえない。

奇妙な空間だった。

朦朧とする意識の中、結斗は考えた。

そして血の気が引いていくのを感じた。














…アリア…!!












そうだ。

僕はアリアのところへ向かってたんだ。



















慌てて両親の部屋へ向かった。

荒々しく扉を開く。


「父さん?!母さん?!」


部屋には倒れている両親の姿。

すぐさま駆け寄る結斗。


「父さん!!!母さん!!!」


再び大きな声で呼ぶと

その声に反応し

二人が目を覚ました。


「ユイ…」


「二人とも!大丈夫?!」


「あぁ…。何が起こったのか…
いきなり頭がぐらぐらして…」


父がゆっくりと語り始めた。

それは結斗と同じ症状だった。


(やっぱりジンの仕業か…!)


「ユイ、アリアちゃんがいないわ?!」


母の言葉に周囲を見回す。

確かにそこには、アリアの姿はなかった。


「父さん、母さん。ごめん、行かなくちゃいけない。
こんな状態のまま放って行きたくはないんだけど…」


「私達は気にするな。ユイ。
早く行きなさい。
アリアはお前の大切なパートナーだろ」


「…父さん…。ありがと!」


急いで部屋を飛び出していく結斗の背中を、両親は見守っていた。
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