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――…
「ユイー!!」
「そんなに走ると危ないよ」
「平気よっ!…っきゃ!!」
「ほら、やっぱり転んだろ?」
「でも、ユイが助けてくれると思ったわ」
ジンが居て、リアが居て
そんな日々に、完全に麻痺していった。
もちろん、勉強は怠らなかった。
だけど、「リア」に溺れていった。
…あの時の事は忘れない。
ジンが血相を掻いて僕の所に来た。
「リアが倒れた」と…そう伝えた。
いつ発作が起こるかわからないリアは
一人での外出を医者によって止められていた。
なのに…。
その日、リアは僕に会うため
病院を抜け出したらしい。
二人で急いで病院に行った時
弱々しいリアがベッドに横たわっていた。
僕とジンが側に行くと、リアは手を伸ばして…
僕の手を握った。
その光景を見て、ジンは部屋を出て行った。
「リア、どうして無茶したんだ」
「だって、これを…すぐに渡したかったんだもの…」
リアの小さな手に握り締めてあったのは
「叶」の紋章を象ったネックレスだった。
「病室で…一人で…。
私、ユイに何か形になるものを残したかったの。
私が生きた証を…」
「何…言ってるんだよ…」
「だって、いつ死ぬかわからないじゃない…私…。だから…」
ゆっくり身体を起こしたリアを、結斗は抱き寄せた。
「ユイ…お願いがあるの。
私の最後のお願い」
「……ん…?」
「私が死んだら…私を貴方の人形にして…?
私の魂で…アンドロイド…創れるでしょ…?
お願い。ずっと一緒に居たいの…」
残酷な願いだった。
彼女はもう…。
「わかった。ずっと一緒に居よう」
「ありがと…」
『死んだら人形にして』
そう遺言を残して、彼女は逝った。
まだ少しだけ、雪の残る季節だった。