とあるレンジャーの休日

 彼が頷くのを待ってから、紫乃は再び両手を伸ばした。
 彼の耳と顎の下に触れ、特に目立った症状がないのを確認する。
 ついでに下瞼を軽く下に伸ばして、紫乃は「うん」と頷いた。

「どこか怪我してる?」

「……いえ」

 質問に対する反応が鈍い。
 ぼんやりした様子も見受けられる。

「貧血気味だね。痛みがないなら極度の寝不足かな。心当たりは?」

 彼は視線を上げ、塚本の顔をチラリと見てから、小さく頷いた。

「しばらく……まともに寝てない」

 紫乃は塚本に目配せして、診察室の中に入るよう促した。

「ベッドで横にさせて。必要なら点滴と眠剤入れるよ」

「サンキュー、紫乃ちゃん。やること早くて助かる」

「ふん。あんたの話は後回しだからね」

 つっけんどんにそう言うと、塚本は笑い、わざとらしく肩をすくめて見せた。
 そうして座り込んでいる彼を立ち上がらせると、一緒に診察室の中に入って行った。


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