とあるレンジャーの休日

 歩きながらふと手の甲がぶつかり合って、離れる。
 一度、二度。
 しばらくしてからまた、三度。

(これって、わざと……?)

 紫乃が見上げると、こちらを見ていた歩と目が合い、彼は言った。

「これさ、普通はそっちから手繋いでくるところじゃない?」

「そんな常識は存じ上げません」

「じゃあ、今から覚えといてよ」

 歩はそう言って、紫乃の手に自分の手を重ねると、様子を窺いながら、そっと握ってきた。
――もし彼が、力任せに繋いできたのなら、勢いで離すことも出来たのに。

 さすがの紫乃も、これには引っかかりどころでない気配を感じ、戸惑った。

「あ、歩は……彼女いないの?」

 動揺しながら訊ねると、彼は表情を曇らせて呟く。

「もしいたとして、他の女の手握るとか、最低じゃねえ?」

「そう、だよね」

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