とあるレンジャーの休日

 だとすると、この繋がれた手の意味は――……

 ここ数年、このような出来事に遭遇することのなかった紫乃は、どう対処したらいいのか分からず困惑した。

「き……近所の人に見られると、困るんだけどっ」

「何が困るの?」

 歩はしれっとした様子で、紫乃の顔を覗き込む。
 顔が赤くなるのを感じた紫乃は、それを見られたくなくて反対側を向いた。

「からかわれるし」

「それくらい、いい大人なんだから、サラッと流しておけば?」

 歩に手を離す気はなさそうだった。
 それを察した紫乃は、隙を見て手を引き抜き、強引に離してしまう作戦に出る。
 だが、いざ手を抜こうとした瞬間、歩にグッと掴まれ、さらに深く指を絡めた繋ぎ方にされてしまった。

「ちょっと!」

「紫乃さ、手繋いだくらいで、動揺しすぎ」

 そう言われ、紫乃はグッと奥歯を噛みしめた。
――もういい大人なのに。
 経験のなさをあまりにも露呈しすぎだろうか。

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