とあるレンジャーの休日

 だが、いくら取り繕おうとしたところで、ないものはないのだ。
 そして取り繕う方法も、紫乃には分からない。

「歩は……慣れてるよね、こういうこと」

 自衛官というのは、意外にモテる。
 真面目で逞しい男性というのは、女性の目にはとても魅力的に映るらしい。
 特に歩は、顔も整っているし、自衛官としてもすこぶる有能なわけで――

「見た目はあれだけど、俺だっていい大人だからね。誰かさんは子ども扱いするけどさ」

 歩はそう言って、再び紫乃の顔を覗き込んだ。
 紫乃は彼から恨めしげな眼差しを向けられ、反省して呟く。

「もうしないから……手離してください」

「そんなに嫌?」

 歩は少しだけ寂しそうに、繋いでいた手を離した。
 紫乃は行き場のなくなった自分の手を握りながら、首を横に振る。

「嫌っていうか……恥ずかしいんだってば」

 紫乃はこの街で生まれ育ったのだ。
 近所を歩けばそこら中に知り合いがいるし、患者だって、その家族だっている。
 誰に見られて、どんな噂をされるか分からない。

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