とあるレンジャーの休日

「じゃあいいよ。その代わり、家に帰ったら膝枕して」

「はい?」

 何が『その代わり』――?

 紫乃が納得いかない顔をすると、歩はニッコリ笑って言った。

「人に見られなきゃいいんだろ? それに紫乃がしたいことがあれば、聞くよ。目の前でストレッチでもしようか」

「私がしたいこと?」

 それなら、さっきから気になって仕方がない背中を触らせてもらうというのは……

 そう考え、紫乃はハッとした。

(違う――!)

「別に何もないっ」

 焦って答えると、歩は軽く肩をすくめた。

「じゃあ俺だけしてもらおうっと」

 うっかりお願いなんかしたら、大変なことになりそうだ。
 紫乃はそう思い、うずうずする気持ちを懸命に追いやりながら、先を急いだ。



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