とあるレンジャーの休日
本を買って家に帰ったら、歩は早速封を開け、ソファで広げて読み始めた。
文庫本を二冊と、漫画本を一冊。
その間に、紫乃はキッチンでお茶を淹れ、おやつを用意する。
夕飯の支度にはまだ早い。
ソファの前のテーブルにお茶とお菓子を運んでやると、歩は「ありがとう」と笑って、緑茶の入った湯呑みを手に取った。
紫乃はダイニングのほうに戻り、買った本を広げる。
だが、歩が気になって集中できず、数ページ捲ってからパタンとそれを閉じた。
この時間、清二郎は午後の診療で、吾郎は格闘術の講義をしに駐屯地へ出かけている。
――数時間とはいえ、家の中で二人きり。
意識しないようにと思っても、なかなか難しかった。
紫乃はふと思い立って立ち上がり、干した布団を取り込むために二階へ上がった。
歩の部屋に入ると、制服はもう片付けてあり、大きめのボストンバッグだけが部屋の隅に置かれている。
ベランダに出て、柵から布団を抱え下ろした。
ふかふかになったそれを畳の上に広げ、窓を閉めたところで、いつの間に上がってきたのか、歩が部屋に顔を出した。