とあるレンジャーの休日

「医務室に行く前にさ、塚本さんが言ったんだ。『君を助けてくれる人の所に行こうね』って。俺、寝不足で限界きてて、ボンヤリしてたんだけど……そしたら紫乃が急に目の前に現れただろ。だから多分、刷り込みされちゃったんじゃないかな」

「刷り込みって……ヒナが親鳥を追いかけるアレ?」

 歩は「そう、それ」と言いながら、紫乃の膝上に頬をすり寄せた。

「紫乃が傍にいると、なんかホッとするんだ。いないと、どこか緊張してる」

 思い出してみれば、医務室では爆睡していた歩も、紫乃が席を外して戻った時には、すでに目を覚ましていた。
 この家に来てソファで眠ってしまった時は、紫乃はすぐ傍のキッチンでずっと夕飯の支度をしていた。
 昨晩は、朝まで一緒にいたわけで――

「眠ってても、傍にいるかいないか、分かるってこと?」

「多分ね。無意識だけど」

 紫乃は驚きに目を丸くし、「動物みたい」と呟いた。

 腿に温かい重みがかかる。
 返事がないなと思い、歩の顔を覗き込むと、彼はすでに目を閉じて規則正しい寝息を立てていた。

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