とあるレンジャーの休日

(わ、もう寝た)

 眠るときは本当に一瞬だ。

 紫乃は、歩の短く切られた髪をそっと撫でて、静かに息を吐いた。

 今はまだ、充分な睡眠を取り戻すことが第一優先。
 でもそのうち、彼には一人でちゃんと眠れるようになってもらわないと困る。

(あの答えが出ないと、無理なのかな)

『何のために戦うのか』という、お兄さんからの重い問いかけ。

 歩が言っていた通り、彼が自分で答えを掴むのを、見守る以外にないのだけれど。

『君を助けてくれる人』

 塚本が言ったという、その言葉に、紫乃はため息を漏らした。

――本当にそうなれたらいいのに。
 そんなことを思いながら、彼女はいつまでも彼の髪を優しく撫で続けていた。


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