とあるレンジャーの休日
歩は優しく微笑んで、訊ねた。
「疲れないの? あんな……いつも働き通しで」
「そう?」
そんな大変そうに見えるのだろうか。
大学にいた頃と比べれば、家事に手が回る分、だいぶ余裕はあるのだが。
「研修医の頃は、当直と手術続きで3日くらいお風呂入れないとか、普通だったよ」
「げっ。やっぱ医者って大変だな」
紫乃は微笑みつつも、頬の辺りに置かれたままの彼の手が気になって仕方なかった。
その手が、よしよしをするように頬を軽く撫でる。
紫乃がくすぐったさに首をすくめると、歩はふっと笑って手を引っ込めた。
「なあ、紫乃は怖くないの?」
「何が?」
「自分が治療した患者が、死んだりするの……」
紫乃は目を丸くして、歩の目をジッと見つめながら考える。
彼が求めているのは、一体どんな答えなのか。