とあるレンジャーの休日
(どうしたらいいんだ、これ)
意識した途端、鼻先をくすぐりだした花のような香り。
彼女の温もり。
そして華奢な柔らかい身体。
手を握るくらいは、なんてことない。
頭を撫でたり、頬をくすぐるくらいは、彼女にも許されている。
だがこれは……
歩は、自分も彼女の背中に腕を回していいものかどうか、しばし逡巡した。
だが、そもそもは紫乃の方から抱きついてきたのだ。
それを受け入れたところで、責められるいわれはないはずだ。
多少、自分に都合のいい解釈をしたような気がしないでもないが、歩はそう考えて腕を伸ばした。
――その時。
ふいに回されていた彼女の腕が動いた。
「ん……歩?」
心臓がドクンと嫌な跳ね方をして、歩は反射的に「うおっ」と叫び、伸ばしかけた腕を引っ込める。
「今、何時?」
紫乃が寝ぼけまなこを擦りながら訊ねた。
歩は首を横に振って答える。