とあるレンジャーの休日

 紫乃はそれに従う前に、ベッドで横になっている青年の様子を確認した。
 輸液を入れただけだが、顔色は少し良くなってきている。
 しばらくまともに寝ていなかったと言うだけあって、今はぐっすり熟睡していた。

「相談とか言って、また面倒事押し付けるつもりじゃないだろうな」

「紫乃ちゃん……俺をなんだと思ってるの?」

――そのまんまだ。
 厄介な問題ばかり持ち込む男。
 それも基本、こちらに丸投げで。

 うろんな目つきを向けていたら、事務作業を片付け終えた薫子が、塚本を見上げて言った。

「いくら二人きりだからって、紫乃先生に変なことしちゃダメですよぉ~」

「薫子ちゃんまで、そんなこと言う?」

 塚本は心底不本意だという顔をしながら、再び紫乃を別室に促した。
 紫乃は軽くため息を吐き、渋々、彼の後をついて行った。



< 12 / 317 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop