とあるレンジャーの休日
「効率よく崩す……?」
吾郎は頷き、歩に立ち上がるよう促した。
「例えば背負い投げだ。型通りなら、襟を持ち、強く手前に引きつけながら肩を入れて、背負う」
歩はされるがまま吾郎に背負われ、その場で投げられた。
自然に受け身を取り、バタンと畳が小気味良い音を立てる。
「普通、引き手は最後まで放さず、技が決まるまでの動きには無駄がない。だがもし、相手が落ちる前に引き手を放したら、どうなる?」
歩は畳の上に倒れたまま、しばし考える。
「技は決まらずに、中途半端に転がる……かな」
「そうだ。相手は受け身が取りにくい。技を最後まで決める必要はない。相手が体勢を崩して手をつくか、こちらに背中を向ければ、一瞬の隙が出来る。そこを仕留めにいけばいい」
なるほど、と思いながら、歩は頷いた。
訓練では、咄嗟に考えなくても身体が動くようになるまで、型を反復して覚え込ませる。
型とは元々、技をかけるための諸動作を極限まで効率化したものだ。
だが実戦は、技を競い合う場ではなく、殺し合い――