とあるレンジャーの休日

――なら一体、自分は何を躊躇っているのだろうか。
 一日も早く部隊に戻らなくてはと思うのに、動けない。
 何がこんなに引っかかるのか。

「あー、わかんねえ!」

 すっきりしない。
 吾郎の言うことも、頭ではその通りだと思うのに、腑に落ちてこなかった。

(紫乃に触りたい……)

 心の中がモヤモヤすればするほど、歩は彼女に触れたくなる。
 優しい花の香りに、体温。
 自分とは全く違う、細いのに柔らかい女性の身体。

 いやらしい意味ではなく、触れて安心したいという欲求が無性に湧いてくるのだ。

(なんだ、これ。やっぱ、なんか刷り込まれてんのかな)

 彼女に助けてもらおうとは、決して思っていないのに。
 何が、自分をこういう気持ちにさせるのか――

 その答えも考えてみたが、やはり歩には、よく分からなかった。


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