とあるレンジャーの休日
タイムリミット
12
紫乃は午前の診療を終え、昼食の支度に取りかかった。
今日はこの後、駐屯地でのバイトが入っている。
あまり時間に余裕がなく、急いで作業をしていた。
だがそこへ歩がやって来て、紫乃の傍にピタリと張り付いている。
「これ、こっちの皿に盛る?」
歩が、小鍋に入っている肉じゃがを指して訊ねた。
紫乃は頷きながらも、彼との距離の近さに、多少の居心地悪さを感じる。
「座って待ってていいよ」
そう言っても、歩は彼女の傍を離れない。
(なんだろう)
紫乃が怪訝な顔を向けると、彼はそれに気付いて、更に距離を縮めてきた。
「紫乃」
「なに……っていうか、顔近くない?」
後ろに下がったら、歩は、なぜかとても寂しそうな顔をした。
それを見て、紫乃はなぜか自分がとても悪いことをしたような気になってしまい、軽く動揺する。