とあるレンジャーの休日
「何かあったの?」
「紫乃――」
「うん?」
今度はその場に踏みとどまり、歩を見上げた。
真顔に戻った彼は、何を考えているのかイマイチ分からない。
そうしたら、顔がぐっと近付いてきて、紫乃は目を丸くした。
(なに……?)
そこへガチャリと、診療所と自宅の間にある扉が開く音が響いた。
廊下の奥から清二郎の足音が近付いてくる。
「おじいちゃんが……」
紫乃がそちらに顔を向けると、歩は深い息を吐き、ゆっくり後ろに下がった。
居間に顔を出した清二郎は、キッチンに立つ二人を見て、特に何も言わずソファに腰かける。
「お、お疲れさま……早かったね」
紫乃がドキドキしながら声をかけたら、清二郎はこちらを見ずに、新聞を広げて頷いた。
「今日は雨だからな。年寄り連中が少ない」