とあるレンジャーの休日
そのまま静かになった清二郎から、紫乃はおそるおそる歩に視線を移す。
彼は何事もなかったかのように、茶碗と箸をテーブルに並べていた。
(さっきの……もしかして、キスするつもりだった?)
まさか、と思う気持ちと、でも、と思う気持ちが交錯する。
もしそうだとしたら、歩はなぜ……?
紫乃は昨日、彼から手をつながれたり膝枕をねだられたりしたことを思い出し、そこで初めて、もしかしたらと思い立った。
――歩は自分に、特別な好意を抱いているのではないか、と。
紫乃は最初から、自分が年上だから、遠慮なく甘えられているだけだと思っていた。
(刷り込みの話もあったし……)
歩は元から人懐っこい性格のようだし、悩んでいる時を除けば、明るくて元気もいい。
だから、そういった雰囲気を感じにくかった。
そして紫乃自身が、彼のことをあまり男性として意識しないよう、自制していたのもある。
「紫乃?」
「ひぁっい」