とあるレンジャーの休日

 急に呼ばれ、彼女は驚いて変な声を上げてしまった。
 それを聞いた歩と清二郎が、訝しげな顔をして彼女を見る。

「どうしたの?」

「大丈夫か」

 紫乃は誤魔化すために、わざと大きく咳き込んでから、言った。

「なんでもないからっ。ごはん、食べよう!」

 焦ってレンジを振り返ると、グリルの中では、とっくに焼きあがっていたサンマの皮が少しだけ冷えて縮み、表面にペタリと張り付いていた。






 しとしと降り続く雨の中、紫乃は傘を差し、ボンヤリ考え事をしながら、駐屯地までの道を歩いた。

 歩は当然、家で留守番だ。

 出がけに彼は、寂しそうな顔をして「俺も行こうかな」と呟き、紫乃は反射的に「ダメでしょ」と、却下してしまった。

 なぜと粘る歩に、紫乃は、色々と配慮されながら休ませてもらっているのに、私服で駐屯地内をウロウロするのは、いかがなものかと伝え、彼は渋々頷いた。

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