とあるレンジャーの休日
廊下を挟んで向かい側に、半分以上物置になっている空き部屋がある。
そこに入ると、申し訳程度に置かれた事務机を挟み、二人はパイプ椅子を広げた。
「まだ診療時間内だから。手短にね」
紫乃が言うと、塚本は苦笑いを浮かべて肩をすくめた。
「あいかわらずだね、紫乃ちゃんは。少しは俺に会いたいとか思わなかった?」
「全然」
紫乃は以前、一度だけ塚本から真剣に口説かれたことがある。
だが紫乃にその気が全くなく、それを伝えてからは、たまにこうして軽口をたたくだけになった。
「それで相談っていうのは、今日連れてきた彼のことなんだけど――」
塚本は何も気にした様子なく、言葉を続ける。
「彼さ、しばらくの間、紫乃ちゃん家で預かってくれない?」
「……は?」