とあるレンジャーの休日

「なんでこんなことに?」

 彼は申し訳なさそうな顔で、頭を掻いた。

「利き腕なんで、つい」

「普通に訓練に参加してたってこと?」

 せめて三日、安静にしてくれていたら、すぐに塞がったのに。

「縫うと、痕がハッキリ残っちゃうよ。このまま塞がればまだ綺麗に……」

 紫乃が説明したら、彼はケロッとした様子で、「じゃあ縫ってください」と言った。

「え?」

「別に痕とか気にしないんで。このくらい勲章ですよ、勲章」

 苦虫を噛み潰したような顔をする紫乃に、その彼は「縫っちゃえば、もっと早く治るんでしょ?」と言い募る。

 紫乃は大きなため息を吐きつつ、「わかった」と頷いた。

(全く……なにが勲章だ)

< 131 / 317 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop