とあるレンジャーの休日

 さすがに早い気がする。
 歩の言い分が本当なら、彼はまだ一人では眠れないのだ。

「そう。紫乃ちゃんのお墨付きがないと、帰せないしなぁ。俺に出来るのは期限の引き延ばしくらいで」

「ふん。リミットは?」

 紫乃が訊ねると、塚本は目を丸くして言った。

「今の言い方、吾郎先生そっくり」

「あんたねぇ……」

「ごめんごめん。えっと……二週間が限度かな」

 歩の体調不良を隠して誤魔化せる期限は、あと二週間――

 塚本は紫乃の表情を観察するようにジッと見つめながら、言った。

「これは本人にも秘密にして欲しいんだけど。もし彼が、完全に回復したら、月末には正式な内示が出る予定だ。異動先での任務と訓練は、今よりずっと厳しい。彼のためにも、しっかり見極めてあげてくれる?」

 それを聞き、紫乃は唾をゴクリと飲み込んだ。

 "今よりもずっと厳しい"

< 134 / 317 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop