とあるレンジャーの休日
「夜は俺、起きてたくても、いつの間にか寝ちゃうし」
「起きてたいっておかしいでしょ。眠れなくて困るから、添い寝してるのに」
紫乃が怪訝な顔をすると、彼はようやく表情を緩めて微笑んだ。
「じゃあ今日も一緒に寝てくれる?」
「あのさ。その……誰かに聞かれたら困りそうな発言は、控えてほしいんですけど」
「俺は別に困らないし」
歩はそう言って楽しげに笑い、軽い足取りで彼女の先を歩く。
紫乃は、その後ろ姿を複雑な気持ちで見つめながら、こっそりため息を吐いた。
キッチンに戻って夕飯の支度を始めてからも、歩は紫乃の傍にピタリと寄り添っている。
紫乃は、彼の懐っこさが日に日に増しているのを感じていた。
(これは……)
横に立つ彼の顔を、紫乃はチラリと見上げる。
頭半分だけ背の高い彼は、彼女の視線にすぐ気が付いて、首を傾げた。