とあるレンジャーの休日
(歩が、私のことを好き……)
その時、紫乃の胸に湧いてきたのは、単純に嬉しい気持ちと、半信半疑な気持ちだった。
――彼が自分を慕うのは、それこそ『刷り込み』ではないのか。
弱っている時に手を差しのべられたことで、そんな気になってしまっただけではないのか、と。
紫乃が考え込んでいると、歩が痺れを切らしたのか、腕立てをするように身体を勢いよく起こした。
「あー、もう! 紫乃的に俺ってアリなの? それともナシ?」
「私的に?」
アリかナシか、と問われれば――……
「それは、アリだけど」
紫乃がそう口にするのとほぼ同時に、歩は彼女に飛びついた。
「紫乃ーっ!」
「うわっ」
膝立ちの彼に、正面から抱きしめられる。
紫乃は目を白黒させながら、そこから逃げ出そうと、もがいた。