とあるレンジャーの休日

「ちょっと、待って!」

「紫乃、好きだ。好きだ好きだ好きだ!」

 締まった筋肉の付いた腕に、ギュウギュウ抱きしめられ、紫乃は息苦しさに呻く。
 と同時に、シャツ越しに彼の大胸筋と割れた腹直筋の弾力を感じてしまい、頭に血が昇った。

(わーっ! これマズいやつ!)

「紫乃……」

 歩の腕が緩み、紫乃がホッとしたのも束の間、手で両頬を包まれる。
 上を向かされ、至近距離から顔を近付けられて、彼女は慌てた。
 咄嗟に避けようとして、彼の手にそれを阻まれる。

「歩、待っ……」

 二人の唇が触れ合う直前、紫乃はギュッと目をつむりながら、歩の脇腹――ちょうど肋骨の下をめがけて、指先をグッと強く突き入れた。

「ぐぅっ……!」

 紫乃からの不意打ち攻撃に、歩は呻き、体勢を崩して脇腹を押さえる。

「待てって言ってるでしょ!」

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