とあるレンジャーの休日

「これ、マジ痛ぇよ、紫乃……」

 布団の上に転がり、涙目でこちらを見上げる歩を、紫乃は睨みながら言った。

「あんたは預かりもんなの! キチンと気持ちに整理をつけて、一人で眠れるようになるまで、そういうのは禁止!」

 歩はショックを受けた顔で、「ええ~」と残念そうな声を漏らした。

「キスもダメなの? 俺たちもう、いい大人なのに?」

 紫乃が奥歯をグッと噛みしめると、歩は寝転がりながら、何気なく彼女の手を握った。

「その先は、なんとか我慢する。だから……キスくらい、よくない?」

「なんとかって……我慢するのは当たり前でしょ! 付き合ってる訳でもないのに」

 すると、歩が顔色を変えて、再び飛び起きた。

「紫乃、さっきアリって言ったじゃん」

「それは、あり得なくはないって意味だから。今すぐ付き合うってことじゃない」

「えええ~っ!」

 彼はまたもや布団の上に転がると、恨めしそうな眼差しを向け、紫乃をジッと見つめた。


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