とあるレンジャーの休日
約束
14
「じゃあ、気持ちに整理がついて、一人で眠れるようになれば……紫乃は俺と付き合ってくれるの?」
その問いかけに、紫乃は困った顔をして俯き、考え込む。
彼が眠れない理由――それは、事故から受けたショックによるものなのか。
それとも彼自身、『戦う理由』が分からなくなってしまったことによるものなのだろうか。
紫乃も、彼を眠らせることをまず優先していたから、踏み込んだ話がまだ出来ていない。
塚本から告げられた期限は二週間。
もし歩が空挺部隊に戻りたいと考えているならば、残された時間はギリギリだ。
彼自身にも、『早く解決しよう』と思ってもらわねば、あっという間に時間切れになってしまう。
そして紫乃は、歩のことを嫌いではなかった。
むしろ気に入っていて、とても好ましいと感じている。
彼に好きだと言ってもらえて、正直とても嬉しかった。
だが、歩と付き合ったとしても、二人は遠く離れた場所で暮らすことになる。
彼に何かあっても、紫乃はすぐに駆けつけることが出来ない。
月曜から土曜まで診療があるし、休みは週に一日だけ。
家事は休みなしだ。
歩も勤務によっては駐屯地から離れられない時もあるから、会えるのは本当に限られた時間になってしまう。