とあるレンジャーの休日
空挺レンジャーとは、正しくは一資格の名前であり、同時に陸上自衛隊で唯一の空挺部隊――第1空挺団所属のメンバーを指す言葉でもある。
彼らは、輸送機やヘリコプターからパラシュートで降下し、作戦展開をする能力を有した特殊部隊だ。
「そんな精鋭が、どうしてこんな街中の駐屯地に?」
「それなんだよね、問題は」
塚本は、困った表情を浮かべながらため息を吐いた。
紫乃は、ため息吐きたいのはこっちだと思いながら、一応話を聞く姿勢を取る。
――正直、彼に対する興味もあった。
あの、少年の面影を残す端整な顔の青年。
彼がまさかの空挺レンジャーとは。
「彼の階級章は見た?」
そう訊かれ、紫乃は首を横に振る。
それを見た塚本は「3尉だよ」と軽く答えた。
尉官ということは幹部クラスだ。
紫乃は顔をしかめて、塚本に疑いの眼差しを向ける。
「彼、まだ二十歳そこそこじゃないの?」
塚本はそれを聞き、おかしげに笑った。
「かなり童顔だよね。でも彼は、今年27になるはずだよ。しかも2士あがりなんだ」