とあるレンジャーの休日
「でも?」
「遠距離は、ツラいなって」
歩は、そんなことは思ってもみなかったのか、目を丸くして彼女を見つめた。
「遠距離?」
紫乃はまるで言い訳するみたいに、言葉を並べる。
「だって、空挺団のいる駐屯地って、車でも電車でもここから二時間以上かかるし。私は診療も家事もあって、家から離れられないでしょ。歩だって、そこまで休みがしっかり取れるわけじゃないだろうし」
すると彼は、急にぷはっと吹き出し、おかしそうに笑いだした。
紫乃は心外だとばかりに、むっとする。
「なんで笑うの」
「いや、だって……そうか。そんな真剣に考えてくれたんだ」
そんな風に言われると恥ずかしくて、紫乃は顔を思いきり横に背けた。
歩はひとしきり笑ってから、彼女の顔をのぞき込む。
「紫乃はさ、なかなか会えないのって、やっぱりツラい?」