とあるレンジャーの休日
彼女は少し考え、黙って頷いた。
恋人も、ハナからいない存在であれば何も期待せずに済む。
でも存在すれば、やはりああして欲しい、こうしたいという欲求が次々湧いてくるものだ。
すると歩が急に手で顔を隠し、またしても横に転がった。
「もう……なんなの。紫乃がすっげえ可愛く見えるんだけど」
「何それ」
「だって」
彼は紫乃の目の前まで転がってくると、とても嬉しそうな顔をして、彼女を見上げた。
「好きな人に付き合いたいとか、いっぱい会いたいって言われたら、嬉しくない?」
そのあまりにも率直な言葉に、紫乃は耐えきれず背中を向けた。
「う、嬉しいとかの前に、恥ずかしいから! そういうこと言わないで」
だが、歩は機嫌良さげな口調で、こう返した。
「やだよ。思ったことは言う。なるべくその場でね」