とあるレンジャーの休日

 紫乃は手元に置いてあるリモコンのスイッチを押して、部屋の照明を落とした。
 しばらくして暗闇に目が慣れてきた頃、歩がゆったりした口調でボソボソと呟く。

「この部屋……紫乃の匂いがする」

(匂い?)

 気になって紫乃が顔を出すと、歩は気持ちよさそうに目をつむりながら言った。

「これ、安心する……かも」

 そうして、ストンと一瞬で眠りに落ちたのが、見て分かった。

(わっ、寝た!)

 紫乃はそれをまじまじと見ながら、考える。

(私って、そんなに匂うの?)

 複雑な気分だったが、これはこれで大きなヒントを得たのかもしれなかった。
 匂いさえあればいいのなら、この部屋でなら、歩も一人で眠れるのではないだろうか。
 もしそうだとして、その後どうするのかという問題はあるけれど。

< 156 / 317 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop