とあるレンジャーの休日

「だから、紫乃ちゃんの恋人なんでしょう? 隠さなくったっていいのに。手つないで歩いてるってネタは上がってるんだから」

「いや、それはっ……」

 やはり見られていたのだ。
 たとえ見たのは一人でも、噂はこうしてあっという間に広がっていく。
 しかも間違った情報に変換されて。

(だからヤダって言ったのに――!)

 山城はニヤニヤしながら「で? いつ結婚するの」と訊いてきた。
 紫乃はこの話題から逃げるためにカルテをサッと開き、そこに書かれた名前を見て絶望する。
――よりによって、中野のおばあちゃんか!
 初日に歩を見かけて、からかってきた三軒隣のおばあちゃんだ。

 紫乃はため息を吐き、とにかく診察を済ませてこの苦行から脱しようと、山城にカルテを渡した。

「患者さん、呼んでください」

 彼女はわざとらしく肩をすくめて、廊下で待つ中野のおばあちゃんを呼びに行く。
 二人に揃ってからかわれるのを覚悟しながら待っていた紫乃は、入ってきたおばあちゃんの様子を見て顔色を変えた。

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