とあるレンジャーの休日
「私は紫乃ちゃんに診てもらいたいの。あんな大きな病院、待ち時間ばっかり長くて、通うだけでしんどいよ」
「でも、痛みや腫れは早く対処しないと。関節が変形したら手術するしかなくなるし、本当に歩けなくなっちゃうよ」
紫乃はなるべく冷静に、総合病院での治療の必要性を訴えた。
だが、おばあちゃんは頑として聞き入れようとしない。
「私は最後まで紫乃ちゃんに診てもらうよ。死ぬときだって、紫乃ちゃんに看取ってもらうんだからね」
「おばあちゃん……焦らなくても、まだまだ先は長いから」
そう言うと、彼女は痛みに歪めていた顔をほころばせて笑った。
追加のステロイドを処方して、後で家に寄ると約束する。
おばあちゃんは一人暮らしだ。
こんな状態では薬局にも歩いていけない。
親族は離れた場所に住んでおり、すぐに駆けつけることが出来ないのを、紫乃はよく知っていた。
診療所に来る全ての患者をフォローすることは、さすがに出来ない。
だが三軒隣のおばあちゃんの様子を見に行くくらいは、ご近所付き合いの一環として割り切れると紫乃は思っていた。
だが山城は、あまりいい顔をしない。