とあるレンジャーの休日
彼は必要なやり取りをてきぱきとこなし、ケースをしっかり抱えて顔を上げた。
「では、先生。また来週もお伺いします」
「え? ああ、はい。よろしくお願いします」
普段はあっさりと帰っていく彼が立ち止まり、改まったことを口にするのを不思議に思っていたら、歩が背後からそっと寄ってきて、紫乃のすぐ傍に立った。
「ん?」
「これで終わり?」
「ああ、うん。そうだけど……」
再び視線を戻したら、業者の彼はサッと頭を下げ、そのまま扉を押して出て行った。
(なんか、様子がおかしかったような)
すると歩は途端に笑顔に戻って、紫乃の身体を両腕ごと、ぎゅうと抱きしめた。
「ちょっと、なにしてんの!」
「早くデートしよ、紫乃。待ちくたびれた」
「なんなの、急に。わかったから、離してっ」
(訳が分からない)
紫乃はもがいて歩の腕の中から抜け出すと、怪訝な顔をしたまま首を傾げ、診療所のドアに鍵をかけた。