とあるレンジャーの休日
おばあちゃんの危機

16

 
 診療がいつも長引くため、土曜日の昼食だけは、それぞれが好きなように取ることにしている。
 そのせいでお腹を空かせていた歩は、外を歩きながらもずっと「ごはん、ごはん」と呟いていた。

 今日は天気が良く、空気もカラッとしていてさわやかだ。

 紫乃は待たせて申し訳ないなと思いつつも、中野のおばあちゃんが気になり、先にそちらへ寄ることにした。

「そのおばあちゃんは、一人暮らしなの?」
 
 歩が、隣を歩きながら訊ねてくる。
 紫乃は軽く頷いて言った。

「小さい頃からよく面倒みてもらったんだ。うち、母さんも医者だから、あまり構ってもらえなくて」

「紫乃の母ちゃん、お医者さんだったの?」

 目を丸くする歩に、紫乃は首を傾げた。

「言ってなかったっけ?」

「NGOで海外にいるとしか……」

 そうかと思っているうちに、二人はあっという間に三軒隣の家に到着する。
 小さな門扉を開いて奥へ進み、玄関でチャイムを鳴らした。
 だが、しばらく待っても、おばあちゃんは出てこない。

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