とあるレンジャーの休日
「なんて?」
「お兄さんを超えたかったって」
「お兄さん……も、自衛官なの?」
紫乃の問いかけに、塚本は静かに頷いた。
「しかも、同じ空挺レンジャーだ。ただ――」
塚本の顔が陰り、紫乃は嫌な予感がして眉根を寄せる。
彼は憂鬱そうな表情で、ぼそりと呟いた。
「先日、訓練中の事故で片手を失ってね。自衛官としては再起不能になった」
――再起不能。
紫乃は無意識に緊張し、息を呑んだ。
『しばらく……まともに寝てない』
あの時、そう呟いた彼の声が、頭の中でこだまする。
「それで、なんでウチに?」
そう訊ねると、塚本はシレッとした様子で答えた。