とあるレンジャーの休日

「あれ……おかしいな」

 紫乃が顔をしかめると、それを見た歩がすばやく庭に回り、居間側の窓から中を覗いた。

「あっ、紫乃!」

 表情と声色を一瞬で変えた歩に、紫乃も嫌な予感を察知して、慌てて駆けだす。

「どうしたの?」

「あれ、おばあちゃんじゃないかな? 廊下に誰か倒れてる」

 紫乃は息を呑み、同じ窓に張り付いて中を覗いた。
 そして階段の前で倒れている両足を目にして、反射的に「救急車!」と叫ぶ。

 咄嗟に携帯を取り出し、119番をコールした歩は、鍵のかかっていない窓やドアを必死で探す紫乃に、コール中の携帯を押しつけた。

「状況説明は紫乃がして。俺が中に入る」

 受け取った彼女は、電話の向こうで話す消防隊員に救急車の出動を頼む。
 家の中で高齢の女性が倒れており、呼びかけても動かないと早口で説明した。
 現在地を伝え、すぐこちらに向かうという返事をもらう。

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