とあるレンジャーの休日
中に入ると、階段の下でうつ伏せに倒れているおばあちゃんが目に入る。
彼女の頭には傷があり、すぐ横の壁には血の跡が残っていた。
紫乃は、彼女が階段から落ちて頭部を打ちつけ、気を失ったのだと判断し、すぐ仰向けに転がして胸に耳を押し当てた。
その直後、頭から血の気がザッと引くのを感じる。
(心停止――!)
反射的に身体を起こし、紫乃は両手に体重を乗せ、心臓マッサージを始めた。
同時に頭の中で原因をめまぐるしく考える。
外傷性ショックか、心筋梗塞か。
彼女の持病はリウマチだけだが、血圧も少し高かったはずだ。
心臓が止まってから、時間はどれくらい経ったのだろう。
階段から足を踏み外した時の恐怖や頭部を打ち付けたことによるショックが原因なら、まだ蘇生の可能性はあるはず――
「紫乃、俺にできることは?」
ふいに歩の声が響き、紫乃はマッサージをしながら顔を上げた。
「救急車、迎えに行って」
「わかった!」