とあるレンジャーの休日

 返事と同時に飛び出していった歩の後ろ姿を見ながら、紫乃は次々と自分の中から湧いてくる絶望を、必死になって振り払う。

(最後まで、絶対に諦めない――!)

 もっと早くここへ来ていれば。
 どうせ家に寄るつもりだったなら、おばあちゃんを一人で帰したりせず、診療所に引き留めておけば良かった――

 考えても仕方ないことが、紫乃の頭の中を幾度も巡っていった。





――どのくらい経ったのか。
 おそらく時間にして数分程度。
 でも紫乃にはとても長い時間が経ったように思えた。

 救急車のサイレンが聞こえるより早く、歩ではなく清二郎がAEDの赤いケースを抱えて、駆け込んできた。

「紫乃。胸元を開けろ!」

「おじいちゃん……!」

 歩が、救急車を迎えるより前に診療所へ行き、清二郎を呼んだのだ。
 紫乃は彼の機転に感謝して、指示通り、おばあちゃんの上衣を手早く捲り上げた。

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