とあるレンジャーの休日

 落ち着くまでと思い、ただ黙って支えていたら、ふいに紫乃の手が歩の背中に回った。
 両手でしがみつかれ、歩は心配になって、彼女の顔を覗き込む。

「紫乃……?」

 彼女は泣いていた。
 ポロポロ涙をこぼし、次々と後悔の言葉を口にする。

「もっと早くここに来てたら……。痛みがあったのに、家に帰したりしなきゃ、こんなことには……」

「紫乃」

「私が、もっとちゃんと……!」

 それが、彼女のせいじゃないことは、歩にもすぐに分かった。
 きっと、紫乃自身もわかっていて、でも言わずにいられないのだ。

 歩にはその気持ちが痛いほどわかる。
 彼もまた同じことを考えたからだ。

 兄が訓練中に起こした事故の時。
 歩は別隊で、兄と共にはいなかった。
 事故の様子もこの目で見たわけではない。
 後から事実を知り、兄の顔を見たのは、病院に駆けつけ、手術を終えた後だった。

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