とあるレンジャーの休日

「彼とお兄さんは、あちらの駐屯地でも部屋が同室でね。四六時中ずっと一緒だったせいで、何をするにもお兄さんの不在を感じるんだそうだ。おかげで彼は酷く落ち込んでしまった。そこで彼の上官が『ほとぼりが冷めるまで』と言って、彼を俺に預けたってわけ」

 紫乃はまた、思いきり嫌そうな顔をして見せた。

「だから……それがなんでウチに?」

「だって、隊舎じゃ眠れないって言うんだもん。紫乃ちゃん家なら近いし、色々安心でしょ」

 いい歳した男が『だもん』とか使うなよと思いつつ、紫乃は困って頭を掻いた。

 そういった状況で、塚本が彼を自分に預けようと考えた理屈は理解出来なくもない。
 だが、引き受けるかどうかは別の話だ。

「預かっても、責任持てないよ」

「大丈夫。彼は正真正銘のレンジャーだから。環境さえ変われば自分ですぐに立ち直るよ。事実、さっきも爆睡してたでしょ」

 そういえば彼は医務室のベッドで、なぜかホッとした顔をして、ぐっすり寝入っていた。

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