とあるレンジャーの休日
「何か食べて帰ろうか」
「いいの? じいちゃんと吾郎先生は?」
紫乃は「大丈夫」と言って肩をすくめる。
「父さんは、土曜の晩は飲みに出るし、おじいちゃんは、ああ見えて料理得意なの。私が帰って来なければ、自分でなんとかするよ」
歩は何かを考えるように視線を逸らしてから、呟いた。
「そうか。紫乃は、酒は飲まないの?」
「私?」
紫乃に晩酌の習慣はない。
そして、飲みに行くような相手もいなかった。
自ら進んで酒を飲んだりはしないが、アルコールに関しては、強くも弱くもない。
「好きじゃないけど飲めなくはない。軽く付き合うくらいなら大丈夫だよ」
「俺、実は全然ダメ」
紫乃は意外に思い、目を丸くする。
「全く飲めないの?」
「うん。コップ一杯で吐くくらい、受け付けない」
苦々しい顔で舌を出す彼を見て、紫乃は笑った。