とあるレンジャーの休日

 紫乃は驚きに目を丸くする。
 地元民のネットワークというのは馬鹿に出来ないものだ。
 地域に根ざした仕事をしている人たちは特に、人間関係の噂に敏感である。

「それ、違うから! 彼はうちの父さんが預かってるの」

「……吾郎ちゃんが? ってことは、自衛官か?」

「そうだよ」

 すると、清水はおもむろに歩の腕を掴み、それを揉んだ。

「おお。いい筋肉してるな、さすが」

「おっちゃん、吾郎先生の友だち?」

 腕を掴まれても気にした様子なく、歩は気さくに訊ねた。
 清水は途端に表情を和らげて親しげに笑う。

「おう、パパ友ってやつだ。紫乃ちゃんとうちの息子が同級生でなあ」

「二人とも、パパって柄じゃないね」

 歩の言葉に、彼はおかしそうに笑うと、二人をカウンターの奥の席に座らせた。

「気に入ったぞ、坊主。名前は?」

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