とあるレンジャーの休日

 歩が代わりに状況を説明する。
 階段から落ちて頭を打ち、病院に運ばれたこと。
 そして、意識がまだ戻っていないことも――

 清水は、優しく労うように言った。

「そりゃ大変だったなぁ。紫乃ちゃん、よくやってくれた」

「おじさん……」

「紫乃ちゃんが大学辞めて、あそこで診てくれるようになってさ。ここらの年寄りたち皆、安心してんだ。じいちゃんもまだまだ元気とはいえ、いい歳だしな。信頼できる若い医者なんて、ここらじゃ本当に少ない。皆、ありがてえと思ってんだぜ」

 そんな言葉を聞き、紫乃の胸に湧いたのは、嬉しさと苦い後悔が半分ずつだった。
 昼間のあれは、自分の未熟さを改めて痛感させられる出来事だったし、そんな風に感謝されるほど、自分が地域に貢献出来ているとも思えない。
 だが、やはり言葉にしてもらえると嬉しいのも確かだった。

「こっちこそ、ありがとう、おじさん」

「へへ。紫乃ちゃんには、ずっとここに居てもらわないとな。よし、何にする? 今日は沢山おまけしてやるぞ」

 紫乃は笑って、隣に座る歩の顔を窺った。
 彼はメニューも見ずに、真剣な表情をして言う。

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