とあるレンジャーの休日
「俺、一番量が多いやつ!」
清水も紫乃も、目を丸くし、大きな声で笑った。
「まかしとけ! すぐ作ってやる」
紫乃がクククと笑っていたら、歩はカウンターテーブルに額をつけ、力の抜けた声を漏らした。
「そろそろ空腹が限界……。なぁ、紫乃。明日も休みだよね?」
「そうだよ」
「じゃあ今度こそ、ゆっくりデートな」
彼は、紫乃以外には聞こえないくらい小さな声でそう囁き、優しい目をして微笑んだ。
それを見た紫乃は、なぜか一瞬泣きそうになり、自分の感情がよく分からず混乱する。
(なんだろう、これ)
ずっと遠く離れていた、懐かしい感情。
嬉しいはずなのに、苦しくて胸が痛いなんて――
カウンターの下でコッソリ握られた手を、紫乃はそっと握り返した。
彼女は赤くなった顔を誰にも見られないように背けると、俯いて静かに唇を噛んだ。