とあるレンジャーの休日

 紫乃は身体もそうだが食も細く、あまり体力があるようには見えない。
 買い物とバイト以外で外に出ることもなさそうだし、たまに空いた時間は本などを読み、動かないことのほうが多かった。

(その割に、仕事量は多いんだよな)

 歩が見る限り、彼女は朝から晩まで、ひっきりなしに働いている。
 家事と診療に追われ、時間が空くのは夕方のわずかなひとときと、夜、そして日曜日だけだ。

 たしかに紫乃の言うとおり、この状態のままでは、歩が部隊に戻っても、ろくに会う時間も取れない可能性が高い。
 元から自衛隊員の勤務というのは不規則だ。
 何かあれば緊急で呼び出されたり、長期でどこかへ派遣されることもある。
 転勤も多いし、結婚しない限りは、遠距離かそれに近い状態になりやすかった。

(結婚……)

 本当に一緒にいたいなら、それが唯一に近い解決方法だろう。
 だが、いくらなんでもそれを考えるには早すぎる。

「そもそも、まだ付き合ってねーよ」

< 189 / 317 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop