とあるレンジャーの休日

 歩は小さな声でボソリと呟く。
 彼が気持ちの迷いに整理をつけ、一人で寝られるようになること――つまり、もう部隊に戻っても大丈夫になるまでは、二人の関係を先に進めることは出来ない。
 そして元に戻れば、今度は離ればなれである。

(どうしたもんかな~)

 まだ出会って数日だが、紫乃とは、今まで付き合ってきたどの女性よりも濃密な時間を過ごしていた。

 歩は18の時から隊舎生活をしてきたのだから当然だが、母親以外の女性にここまで色々な世話をしてもらうのは初めてのことだ。
 食事に洗濯、寝床に睡眠――衣食住のすべてを提供され、そのどれもが自分にとって心地よく快適だった。

 それに、彼女と一緒にいて全然無理がない。
 紫乃は嫌なことは嫌だとハッキリ言う。
 それもキツい感じではなく、気軽に気持ち良く受け取れる形で。

 甘えるにも、頼み事をするにも、あまり気を使わずにいられる。
 女性と一緒にいるとき特有の、神経が擦り切れるような疲れを感じなかった。

 そしてなによりも、年齢の割に男慣れしておらず、少しでも攻められると、あっという間に動揺してしまうところが、なんとも言えずかわいらしい。

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