とあるレンジャーの休日

(あ~……困った)

 もし紫乃がずっと傍にいてくれたら――あちらに戻っても、なんとかやっていけそうな気がするのに。

 だが、彼女はきっと、直感よりも地道な信頼の積み重ねを大事にするタイプだろう。
 歩がいくら時間がないと焦ったところで、強引にどうにか出来るものではない。

 それに、たとえ強引に連れて行ったとしても、彼女がいないと眠ることすら出来ないのでは、やはり話にならないのだ。
 結局は、自分の問題を解決しないと、前には進めない。

(ひっかかる理由を探さないとな)

 自衛官としての誇り、自負、責任。
 それらは何も変わることなく、今も歩の中にある。
 どうしても守りたいと思うものも、なんとなくは見えていた。

 なのに、いざ部隊へ戻ることを考えると足が竦む。
 胸の中に正体のわからない、不安にも似た迷いや躊躇が湧いてくる。

(怖いんだろうか――)

 戦場へ向かうことが?
 自分もいつか死ぬかもしれないことが、怖い……?

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