とあるレンジャーの休日

 あくび混じりの声は、とても眠たそうだった。
 朝から元気な彼にしては、珍しい。

「どうしたの? あんまり眠れなかった?」

「いや、大丈夫。だって今日、デートだし」

「ちょっと……」

 家の中でなんてことを言うのか。
 紫乃が一人焦っていると、その時、居間にいた清二郎が廊下に顔を出した。

「起きたか、二人とも。ちょっと来い」

 紫乃は一人青ざめ、歩と清二郎の顔を交互に見る。
 まさか今の発言を聞かれてしまったのだろうか。
 だが歩は呑気な表情をして、紫乃の後をついてきた。

 何を言われるのだろうとヒヤヒヤしていたら、清二郎は居間のソファに座って、こう言った。

「俺は明日、都内の大学病院に行ってくる。午前中の診療は紫乃一人になるが、任せていいか」

「大学……? 明日、何かあったっけ」

 清二郎は長年地元で医師をしているのもあり、いくつか役職を請け負っていて、たまに医師会の集まりや厚労省関連の会議に呼ばれたりする。
 てっきりその一つかと思ったら、清二郎の口から出てきたのは予想もしなかった答えだった。

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